アリスター・オーフレイム~歓迎されざる王者~

今回で18回目を数えるK-1GP。

シュルト選手以来となる、新たなる王者が誕生した。

彼の名はアリスター・オーフレイム。

その身に纏うは筋肉の鎧。

さながら仁王像がそのまま動き出したかのような姿に、人々は息を呑んだ。






え?

すてろい……ど……?






知らんな。





何はともあれ、圧倒的パワーを武器にKの頂点に登りつめたアリスター。

しかし、その王者載冠の瞬間はあまりにも静かだった。

拍手も少なく、歓声よりも悲鳴や溜息の方が多いように感じられたのは、私の気のせいではないだろう。

原因は2つある。

1つは対戦相手、ピーター・アーツ。

今年で40歳を向かえた彼は、準決勝で4タイムス王者セーム・シュルトと死闘を繰り広げ、そして勝った。

第1回大会から出場している、まさにK-1の顔。

一度は終わった選手とまで言われた男が、K-1史上最強とも言われるシュルトに対して、およそ40歳とは思えないファイティング・スピリットを見せ付けた。

観客が熱狂しない訳はない。

目の前にいるのは、紛れもない「生ける伝説」。

100年に1度と言われる不況の中で喘ぐ現代人達は、苦境に立たされてもなお挫けぬ彼の背に希望を見出したのかもしれない。

そんな彼が決勝に進出したのだ。

応援されない理由はない。

対戦相手となったアリスターには気の毒だが、この時、アーツは英雄であり、アリスターは打ち倒されるべき者になっていたのだろう。



しかし、こういった構図になったのにはもう1つ原因がある。

メディア、K-1サイドによる「アリスター=外敵」という煽りである。

アリスターと言えば、総合格闘家というイメージが根強い。

実際、PRIDEにもよく参戦していたし、PRIDE消滅後はストライクフォースでヘビー級王者についている。

しかし、彼は総合格闘家だがストライカーだ。

バックボーンはキックボクシングで、K-1にも以前から参戦している。

一度、K-1VS極真空手という対抗戦があったのだが、その時彼はK-1代表の選手として戦っていた。





ちなみに、その時はグラウベ・フェイトーザにKOされた。





それはさておき……。

そう、彼は別に外敵ではないのだ。

そもそもK-1に外敵など存在し得ない。

K-1とは色んなバックボーンを持つ者達が一堂に会し、「誰が立ち技最強かを決める」というスタンスの下始まったものだ。

つまり、他流試合の場であり、そこにいるのは皆が皆外敵であり、皆が皆1つの頂を目指す同志とも言える。



しかし、彼は外敵にされてしまった。

K-1は最早、1つのブランドに成り下がってしまったのか、その外から来たものは外敵になるのだろう。

また、メディアからすればその方が煽りやすくもある。

人は、「敵」という言葉に弱い。

某国家は国内の行政に対する不満をそらすため、反日感情を煽ったりしている。

日本でも、政治に対する怒りのやり場として、公務員や官僚が悪役として名指しされることがある。

「敵」とは、人々の目を引くには絶好の存在なのだ。



そんな訳で、エンターテイメントとして「敵」を求めたK-1は、アリスターという存在に行き着いたのだろう。

そんな中で行われた、昨日の決勝戦。

K-1を背負ってきた不屈の伝説ピーター・アーツと、外敵アリスター・オーフレイムの試合はまさに主催者の望んだカードだったことだろう。

煽りは十分。

人々は固唾を呑んで見守った。






勝ったのは外敵だった。





アーツの背に希望を見出し、また相手は外敵だと煽られた観客達の中に、果たしてどれだけアリスターの勝利を喜んだ者がいただろうか?

会場の冷めた空気が、アリスターという王者を拒んでいるようだった。

それもそうだろう、アリスターはあの時、打ち倒されるべき者だったのだ。

打ち倒されるべき者が立っていて、こともあろうに勝ち名乗りを受けているのだから、そんなものを歓迎できる人間の方が少ないだろう。

しかし、これはリアルファイトであり、現実とは常に思い通りになるものではない。

アリスターは、残酷な現実を象徴する王者となってしまったのだ。






最近のK-1王者は、どこか悲劇的であると思う。

強すぎるが故に、勝利を喜ばれないシュルト。

バダ・ハリの反則により疑問符が付けられてしまったレミー。

そして、アリスター。





いつの頃からだろうか?

王者がリスペクトされなくなったのは……。





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